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  • 2017/06/15

「正解を速く見つける能力」が時代遅れになった理由 篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(87)

圧倒的な価格低下によって爆発的に普及する新技術の勢いが産業の垣根を揺さぶっている。こうした時代には「国家百年の計」といわれる教育=人材育成の役割が重要となる。だが、日進月歩の技術と人材育成の時間軸は大きく異なるため、教育効果がすぐに陳腐化する事態に陥りやすい。イノベーションが加速する社会で求められる人材の資質とは何か、今回はこの点を考えてみよう。

九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠﨑彰彦

九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠﨑彰彦

九州大学大学院 経済学研究院 教授
九州大学経済学部卒業。九州大学博士(経済学)
1984年日本開発銀行入行。ニューヨーク駐在員、国際部調査役等を経て、1999年九州大学助教授、2004年教授就任。この間、経済企画庁調査局、ハーバード大学イェンチン研究所にて情報経済や企業投資分析に従事。情報化に関する審議会などの委員も数多く務めている。
■研究室のホームページはこちら■

インフォメーション・エコノミー: 情報化する経済社会の全体像
・著者:篠崎 彰彦
・定価:2,600円 (税抜)
・ページ数: 285ページ
・出版社: エヌティティ出版
・ISBN:978-4757123335
・発売日:2014年3月25日

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「ヒト」に求められる能力が大きく変化している
(© chachamal – Fotolia)


技術と人で異なる変化の時間軸

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 前回みたように、「産業」の垣根を越えてイノベーションの波が押し寄せる情報社会では、10年、20年先に栄える産業を見極めて、どんな知識と技能が求められるかを正確に予測することは事実上不可能だ。

 こうした時代に、稼得機会を増やし所得水準を高めるためには、労働市場と教育市場の連携が欠かせない。変化に対応していくための知識と技能の習得=教育機会を拡充することは、まさに「国家百年の計」といえる。

 ここで、注意しなければならないことは、教育などの社会の仕組みは、日進月歩の技術革新とは「変化の時間軸」が大きく異なり、かつ、その乖離が加速している点だ。

正解を速く見つける能力は時代遅れ

 現実の社会は、さまざまな世代からなる構成員によって動いている。新事象に対する受容力が大きい若年層に即効性のある教育訓練を行う場合でも数カ月は必要で、基礎学力の段階から本物の力を身に付けようと考えるなら、時間軸は数年単位にもなる。

 ところが、ムーアの法則が半世紀も続いた現代の技術は、変化量が指数級数的で、ようやく技能を身につけた時には、技術がさらに飛躍して、知識や技能が陳腐化している事態に陥りやすい。

 こうした時代には、人が正面から技術と競うのではなく、技術にできることは任せ、人が得意なことに注力するという観点で、イノベーションが切り拓く新領域を俯瞰し、「人と技術の比較優位による補完的な分業関係」を模索し続ける努力が必要だ。単に、正解を速く見つける能力は、もはや時代遅れといえる。

 求められる資質は、圧倒的な価格低下で爆発的に普及する技術をふんだんに活用し、人間にしかできないことをやろうとする意欲、情熱、感性、発想力、行動力だ。

【次ページ】これから求められる人材の資質は何か

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